顔面輪郭を改善したいと希望される患者様からの具体的な要望は、『できるだけ小顔に』『卵形の顔に』『滑らかな美しい輪郭に』などです。とりわけ輪郭の中でも下顎形態は、その人の顔貌を良い意味でも悪い意味でも特徴つける重要なパートです。そしてさまざまな大きさ、形態が存在します。理想的な下顎の形態は、耳垂から顎先にかけて下に凸の緩いなだらかなカーブで、細く小さな顎であり、いわゆる“卵形”ということです。
患者様のエラ切除に関する要望は、正面、斜め、横顔どこから見ても(3次元的)できる限り顔を小さくしたいということが多いです。
1)正面顔においては四角い顔、ホームベース型の顔を卵型に小さくする
2)横顔においては下顎角(エラ)の突出を目立たなくする
というものです。これに対して広く行われている下顎角部に限定した骨切り術では、正面顔ではほとんど変化が得られません。正面顔で卵形にするためには、下顎体部を中心とした骨減量+咬筋減量”を行うことが重要です。私は過去20年間で1500症例を超える下顎形成術を行ってまいりました。私の開発した手術法は、海外の医学雑誌(イギリス:JPRAS)、美容外科学専門書(アメリカ:QMP)に掲載されており、広く知られている方法です。
また近年、CAD/CAMコンピュータ・システムの発展により患者様の顔面骨と等身大の3次元立体模型を容易に手に入れることができるようになりました。CTスキャンから抽出されたデータから製造され、患者様の解剖構造に関する詳細な情報が提供されます。私はいち早くこの3次元実体模型を導入いたしました。この模型のおかげで、手術は安全に執り行われ、手術前に綿密な計画を立てることにより最大限の効果が得られ、かつ手術時間も短縮されるため患者様への負担は最小限になりました。
1)下顎形成術は一般的に口内法(口の中の切開)で行われますが、皮膚に傷跡を残さないという意味では患者様にとって大きなメリットがあります。一方、術者にとっては術野の展開に限界があり、決して良い視野とはいえません。骨切りの際にはその狭い術野に骨鋸、リトラクターを挿入したうえで操作しなければならず、下顎角の骨面の角度も相まって盲目的骨切り(見えない中で骨を切るということです)を余儀なくされることも多く、術者の勘で骨を切ったり、削ったりしなければなりません。
2)また骨切り時に、一般的に使用されるオシレーティング骨鋸では、口角と骨鋸(ハンドピース)が接触して、骨切り方向は限定されてしまい、計画しているイメージ通りに骨切りできるわけではありません。
1) 口腔内アプローチ・下顎枝後縁では盲目的骨切りを余儀なくされる。→正確な骨切りは不可能である。
2) オシレーティング・ソーによる骨切り・口角にてその角度、可動性が制限され、垂直方向の骨切りとなる。→Gonial angleが正常範囲を大きく逸脱して角部喪失となる。
この2つの大きな障壁により、下顎形成術は難易度の高い手術と言えます。私の開発した方法はこの2つの障壁を克服したものであります。
下顎形成術に限らず、手術を成功に導く第一歩はその解剖学的な構造の理解から始まります。下顎角(エラ)形成術においては、下顎骨、咬筋、下歯槽神経、buccal fat padが重要な要素です。
顔面下1/3の顔面輪郭を主に決定つけている解剖学的な要素は下顎骨です。下顎骨はU型の長い骨で、両側には垂直方向に伸びる下顎枝があります。下顎角は下顎骨の最外側に位置しており、そこは下顎枝の下縁と後縁が交差する部分です。外斜線は、穏やかな盛り上がりで下顎結節よりより後ろ上方に延びて下顎枝の前縁を形成します。
下顎角という解剖学用語は、骨構造における用語です。横顔においては、その下顎角の輪郭が見える(感じられる)ことが多いのですが、正面から見た際には下顎角の輪郭は全く見えてはいません。といいますのは頬のふくらみの裏側に位置するからです。一般的に医師にも患者にも、正面顔で最も張り出している部位が‟下顎角”であると誤解されています。下顎骨を正面(前)から見ますと、確かに下顎骨の最外側に位置しています。頭蓋骨模型やレントゲン写真(前後像)を見ると下顎角は下顎骨の最外側に位置していますので、その部分を削除すれば正面顔での横幅が減少すると誤解を患者様に与える要因となります。
ところが実際には、正面顔の幅を決める位置は、下顎骨では、角部ではなく体部~下顎枝の弯曲、張り出しの程度となります。正面顔で最外側突出部位は、咬筋の前方1/3ぐらいであり、下顎骨で言うと、‟外斜線から下顎枝の前方1/3”ほどに位置しています。高さは口角とほぼ同レベルであり、ほぼ咬合平面に一致していることが多いのです。エラを小さくしたいという患者様のほとんどが、正面顔をほっそり卵形、逆三角にしたいといいます。したがって正面顔におけるエラ(患者様の言うエラ)を細くしたいという場合には、手術のターゲット部位は下顎角ではなく、下顎体部(外斜線~下顎枝前方)であり、咬筋であるといえます。3次元的な下顎角の理解、さらに正面顔の横幅に大きく関与する咬筋の存在を確認することによって、理想的な形態を手に入れるための方法論が良く理解できるのです。
咬筋は短く強い筋肉で、立ち上がり(起始)は頬骨弓の2か所から、全体が下顎骨の外側下顎枝に停止します。浅層は頬骨弓の前1/3の下縁からであり、深層は頬骨弓の深い表面から起こっています。顔面神経の頬枝は、咬筋前方で密接に走行しており、parotid-masseteric fasciaで境界されています。咬筋の大きさ、厚みには個人差がありますが、下顎骨と同様に顔面下1/3の形態、幅を左右する重要なポイントとなります。咬筋肥大の程度は安静時、咀嚼時における咬筋の視診、触診により容易に診断できます。さらにCT像ではさらに正確に咬筋の厚みを含めた有用な情報が得られます。
下顎形成術で最も注意しなければならないのが下歯槽神経ですが、この神経の走行位置によって手術効果の限界が決定します。下歯槽神経は下顎枝の背面での下顎孔から入って、下顎骨体部の中を通過し、大臼歯、小臼歯、犬歯に枝を出しオトガイ孔に至って、オトガイ神経として骨から出ていき、もう一方骨内では、切歯に枝を出していきます。オトガイ神経は下口唇の皮膚、粘膜ならびに顎(オトガイ)の感覚に関与します。
下歯槽神経は下顎骨の髄質部分cancellous spaceを走行しており、正面顔で顔を細くする際にその走行する深さによって限界値が設定されます。正面顔を細くする際に大きく影響するのが下顎骨の厚みと咬筋の厚みです。究極的に言いますと、下歯槽神経と咬筋表面上の顔面神経との間が減少できる幅(厚み)ということになります。ひとたび下歯槽神経が損傷されると、下口唇のしびれ、歯の知覚障害などを引き起こします。また顔面神経を損傷してしまうと口元を中心に顔が歪んでしまいます。
1)2つの神経を温存しながら、患者様の希望(できるだけ細くして欲しい!!)にお応えしたいという使命感
2)下歯槽神経、顔面神経は損傷すると患者様には手術前のコンプレックス以上の不快感を与えてしまう
という狭間で外科医はジレンマと葛藤しています。そしてそれを克服して最大の結果を患者様に提供する使命がかせられているのです。
頬脂肪体は顔面の深部に位置しています。主要部分と4つの延長体(buccal, pterygoid, superficial, and deep temporal)からなっています。これらのうちbuccal extensionは咬筋のすぐ前方深い位置にあり、頬の輪郭に影響しています。
患者様のエラ切除に関する要望は正面、斜め、横顔どこから見ても(3次元的)顔を小さくしたいということが多いのですが、正面顔の改善と、横顔での改善は異なったテクニックを必要としますのでそれぞれわかりやすく別々に説明いたします。
角部を含んだ下顎下縁全層骨切りを行います。下顎下縁の自然な形態を残すためには、下顎枝後縁よりオトガイ孔の下方付近まで、わずか下に凸な曲線的な骨切りを行うべきです。
オシレーティング骨鋸による骨切りが広く行われていますが、骨切り線は直線となり、また口角にてハンドピースの動きが制限され、術者の意図したとおりに骨切り線をコントロールできず良い結果は得られにくいのです。特に下顎枝後縁においては垂直(頭側)方向の骨切りとなるため、術後Gonial angleは正常範囲を大きく逸脱し、角部が喪失することもあり、非常に不自然な形態となります。さらに骨切り線が関節突起方向に向かった場合には骨折をきたす可能性もあります。
外板(がいばん)とは、下顎骨の表面側の白い硬い部分(皮質骨)です。その裏側は海綿骨(髄質)となります。
正面顔で顔を小さくする(細くする)ためには、下顎骨の厚みを薄くすることが効果的で、そのため外板の骨切り、骨削りが行われます。
本術式が適応となるのは、正面顔を細くしたい患者様で、下顎骨体部の外板が厚く、強く外側に張り出しているような方です。部位的には、外斜線、下顎枝前縁を中心として体部全体の骨皮質の減量が必要です。
骨切りか?骨削りか?の手術適応の選択ですが、CTデータから下歯槽神経の走行の深さを確認し、評価します。
下歯槽神経が、外板の裏側ぎりぎりを走行しているような場合に外板を切除しようとすると神経損傷の可能性も全くないとは言えません。したがって安全を一番に考え、ラウンドバーで外板を削る(shaving)だけにした方が無難です。外板をある程度削った後は慎重に低速回転として深く削りこまないようにすべきです。
一方神経の走行が平均的な深さ(6~10㎜程度)であれば、できるだけ小顔効果を出すために外板は全層に分割して切除します。
併用手術としては、咬筋減量術と頬脂肪体buccal fat pad切除術の2つがよく行われます。
1) 咬筋減量術 咬筋減量術はまず咬筋の厚みを評価したうえで、適応のある患者様に行います。当院ではCTデータより咬筋の厚みを計測したうえで減量する方法を行っています。咬筋の表層には顔面神経がありますので外科的切除はリスクがあります。
咬筋を均一にとることは不可能であり、合併症として、顔面神経麻痺、皮膚表面上の凹凸変形が報告されています。
当院で行う咬筋減量術は、RF(ラジオ波)を使った焼灼法です。咬筋の深部から60~80℃の熱を与えて凝固し、筋肉の構成要素であるタンパク質に、蛋白変性を引き起こして減量させる方法です。咬筋以外ではふくらはぎ(腓腹筋)にも大変効果があります。
非外科的な方法として、ボトックス注射があります。一般的にボトックスは4~6か月の持続効果であり、1年間に2~3回の繰り返しの注入が必要になります。注入を8~10回ほど繰り返しますと、長期的に筋肉の動きが制限されることにより、廃用性萎縮を起こして、ある程度の永久効果が得られると考えられています。
ただし注意すべきは、咬筋だけが薄くなりますと、その範囲だけがくぼんで影になり、不自然で不健康な感じが強く出ます。筋肉だけで顔幅を細くしようというのは美容的には逆効果となる可能性があります。
すなわち骨の厚み、筋肉の厚みを程よくミックスしてバランスをとることが重要です。
2) 頬脂肪体切除 Buccal fat pad removal この手技も患者様の適応、選択が重要です。適応を誤ってこの手術を行った場合には頬がこけて、かえってエラ、頬骨の張り出しが気になります。実際にこの手術が適応になる方は比率で言いますと、下顎形成術を行う患者様のうちの30~50%程度です。
頬脂肪体を切除して減量効果が出るのは、咬筋の前縁から口角にかけての領域です。患者様にもわかりやすいのは、口唇を閉じた状態で息を吸い込んでみると頬がへこみますが、その状態が頬脂肪体を切除した状態です。
脂肪の摘出量は術者が経験によって調節することになりますが、通常は小指頭大~拇指頭大です。
先に述べました咬筋減量術を行った場合に、咬筋の範囲で肉厚感が改善したのに、その前方に位置する頬脂肪体部位が相対的に膨らんで見えることがあります。したがって咬筋減量の程度によっては本術式を併用する場合もあります。
併用手術としては、咬a初めのコンサルテーションで患者様にお伺いしたいのは、
1. 『正面顔をほっそりとさせたいのですか』
2. 『横顔で出っ張っているエラを切除したいのですか? 横顔で頬が四角く見えているのを改善したいですか?』
3. 『正面も横顔も改善したいですか?できるだけ小顔にしたいのですか?』美容手術はまずは患者様の希望が最優先されるべきです。その要望に従って、手術の適応が決まります。
具体的には正面顔を細くすることと、横顔におけるエラの張り出しを改善することとは違った手法(アプローチ)が必要になるのです。
外科医側はバランスよく、調和のとれた小顔にすることに力点を置きますので、診察の際には、エラ切除だけで美しくなれるのか?下顎全体で評価した場合にはアゴ(オトガイ)まで手術を広げる必要があるのか?
オトガイの手術は何を併用すればバランスの良い小顔になるのか?このあたりは、コンピュータ・シミュレーションで患者様には画像で確認していただくのがわかりやすく、そのメリット、デメリットを検討していただくことになります。
また下顎角というより下顎骨全体を小さくしたいのであれば、下顎全体を後方に引き下げる顎矯正手術(下顎枝矢状分割術)が適応になるのか?噛み合わせはどうか?なども評価します。
バランスという面では、下顎だけを見るのではなく、頬骨との関係も重要であり、エラが小さくなることにより一層頬骨が強調されてしまうこともあります。筋減量術と頬脂肪体buccal fat pad切除術の2つがよく行われます。
総合的に判断してどの手術を行うべきかのアドバイスをさせて頂きます。患者様とのコンサルテーションで希望をよく伺い、視診、触診(患者様の顔を見て、触れて判断する)を行ったうえで治療方針は決定します。
下顎角部の相対的位置、突出方向・程度を評価しますが、1) 皮膚表面上での耳垂基部から下顎角部までの垂直距離。2) セファロにおける下顎平面角(Mandibular plane
angle:MPA)の2点が重要です。
そのうえで角部全層切除術の必要性、切除骨片の大きさ、形状などを検討します。
1) 耳垂の先端から下顎角の先端までの距離(X)は重要で、拡大下顎角骨切り手術の際に垂直方向の切除量(Y)を決定する際に重要な指標になります。術後の垂直距離を患者の希望を考慮して女性であれば20mm前後に設定し、骨切り量Y=X-(20~25)としてデザインします。
Xは耳垂基部から下顎角までの垂直距離Xは日本人女性平均約25㎜骨切り線前方はオトガイ孔下方までを基本とするが、時におとがい結節を超えることもある。骨切り垂直高 Y=Xー(20〜25)㎜に設定
2) もう一つ重要なのはオトガイ先端の位置です。下顎平面角(Mandibular plane angle:MPA)は、オトガイの下端と下顎角を結ぶ線とフランクフォルト平面(眼耳平面)のなす角度です。
この角度が鋭角であればあるほど横顔は四角く見えます。耳垂―下顎角距離を念頭仕入れて、オトガイの長さも同時に評価します。下顎下縁全層骨切り術の適応は、以下の3型に分類します。
Type I : MPA.は平均値以上で全層骨切りを必要としない。
Type II : MPA.は平均値以下で、オトガイ幅(左右オトガイ結節間距離)が平均的である場合には、角部からオトガイ結節付近までの全層骨切りを必要とする。
Type III: MPA.は平均値よりかなり小さいため、角部から中央に向かいオトガイ結節を越えた全層骨切りを必要とする。
これらを参考に前方への骨切りライン(水平長)を決定します。私の場合は、現在では下顎角部に限局した骨切りを行うことはほとんどなく、ほぼ全例でオトガイ結節付近まで骨切りを行っています。
理由は骨切り後の前方にラインの不整を残さないため、また前方における骨切り、骨削りは正貌における横幅減少効果をもたらすからです。できる限り生理的で自然な角・段差の少ない曲線的なエラを残すような骨切り法を行うべきです。
注意すべきは前方に残る段差です。前方での骨切りラインの入射角が鈍角であればあるほど、段差としては目立ちます。それが強いと“下顎角の前方移動”とか“double angles”などと呼ばれる変形を残します。
オトガイ結節に近くまで骨切りを行えば、骨切りの入射角が鋭角になっていくため段差は目立ちません。
ただしその場合には下歯槽神経の走行位置が問題となります。下歯槽神経はオトガイ孔の外側2㎝程で最低点(尾側)を通過します。平均的に下顎骨下縁からは6㎜位のところを走っています。この数値は私の施設で行った患者様のCTデータ値から分析した結果であります。
下顎角骨切りを前方まで行う際には、下歯槽神経の位置(垂直方向)がカギを握りますのでCT、3次元実体模型が非常に有用です。
当院における統計では、90%以上の患者において側貌での変化よりは正貌での変化に希望の比重がおかれています。実際の患者様の希望として、ホームベース型や四角型の輪郭を卵型に近づけたいとのことです。
正面顔で顔面下1/3の大きさを決定している解剖学的な構造として、下顎角の形態、咬筋の厚み、皮下脂肪(頬脂肪体)の量などが挙げられます。したがって正面顔でほっそりした小顔を形成するためには、これらの要素のうちどの構造が顔の大きさに強く関与しているかを評価しなければなりません。そのうえで適切な手術が何なのかを判断します。
正面顔の改善においては、下顎体部の厚み、弯曲、張り出しの改善と咬筋の厚みの改善が同時に必要になることが多くあります。
患者様に咬筋を強く膨らませてもらった状態と安静時の差で咬筋の厚さは大まかですが判断できます。奥歯を咬んだ際に咬筋が盛り上がる方は咬筋減量術の適応があります。
また下顎骨を触診でしっかり確認して最大横径部位である咬筋の中央から前縁あたりまでの下顎骨の形態をよく把握します。この位置は外斜線から下顎枝の前縁あたりに一致します。
さらに詳しく減少量などを検討する場合には画像診断として、CT検査が必要になってきます。
1)
セファログラムCephalogram セファロからGAとMPAが得られます。横顔を改善するための情報としては有益ですが、正面顔を変化させるべく手術を行う際にはほとんど役には立ちません。
画像はあくまで2次元であるため下顎角、オトガイ形成などの手術においては今一つ役に立つ情報を提供してくれるわけではありません。
2) パントモ
Orthopantomgram パントモは下歯槽神経(IAN.)の大まかな位置を知るには有用です。ただしこちらも骨の3次元形態を把握できるわけではありません。2次元画像ですので、下歯槽神経走行の深さはわかりません。
なお当院では、最新鋭のCTscanを完備していますので、エラ手術に際してはセファロ、パントモ撮影は行う必要はありません。
3) CT
scans 顔面輪郭形成手術で、最も役に立つ検査はCTです。さらにこのCTデータから製作される3次元実体模型です。CTでの画像データはコンピュータ上でいかにも処理できますので、3次元画像で患者様にも頭蓋骨の画像が確認していただけます。
また骨組織だけではなく、軟部組織である咬筋の厚みがわかり、咬筋減量手術の適応、切除範囲、切除量など、安全にかつ適正に減量するためには必須といっても過言ではありません。
また骨切り、骨切除の際に最も重要な下歯槽神経の走行(深さを含めた正確な位置)が全範囲でこちらも1ミリ単位以下でわかるのです。いかにCTが重要であるかを理解していただけたと思います。
さらに3次元実体模型はCTデータから抽出されたデータをもとに、個々の患者様の下顎骨と等大で製作されます。
この模型から下歯槽神経の3次元での走行がわかるため、骨切りに際して神経を損傷する可能性がほとんどありません。逆を言うと、このデータがない場合には控えめな骨切り、骨削りを行わざるを得ないため効果がしっかりと出ません。
また模型では下顎骨全体像が把握できます。手術中は口の中からわずかな部分しか見えていません。そこで模型から左右の骨の差が把握できますので、左右非対称の患者様にとっても大きな味方になります。
また下顎角、下顎枝後縁はときに内側に曲がって手術中に骨を切る際に見えないことがしばしばあります。その際には以前は内視鏡を使って骨切りを行いますが、同時にこの3次元実体模型は有益な情報を与えてくれます。
術前
術後6ヶ月
術前の正面顔は典型的なホームベース型でした。下顎体部を切除し、頬骨の横への突出を抑えることで、女性らしい丸みを帯びた滑らかな輪郭を作り出しています。下顎体部の骨減量は、正面顔に大きな変化を及ぼします。
術前
術後4ヶ月
正面顔でホームベース型の顔型を改善したいとのことでした。術前後のCTからもわかるように、下顎角切除は外側にはねている部分(フレア)だけであり、ごくわずかです。正面顔での劇的な変化は外板切除と咬筋減量による効果です。
術前
術後7ヶ月
正面顔だと四角に近い形状でお悩みだった患者様です。下顎形成術によりお顔の外側への張り出しが改善し、下顎の形状が自然に。さらに、頬骨縮小術・オトガイVライン形成術を行うことによりに男性的だったオトガイが細くなり、エラまで美しいラインが形成されました。