正面からみて鼻の穴が目立つ場合に、鼻孔縁に軟骨移植または皮膚ー軟骨移植を行ない鼻の穴を見えなくします。鼻孔縁の形と重症度に応じて、鼻翼軟骨、耳介軟骨、皮膚ー軟骨複合組織移植を選択します。
鼻孔が正面からみて目立つ(retracted nostril rim)のを改善したいという希望は少なからずあります。改善方法は、鼻孔の内側に軟骨移植を行います。東京院・広比院長(当時)が開発した方法は画期的なアイデアであったため、2003年、世界的に有名な美容外科医学専門誌である”Aesthetic Plastic Surgery”に掲載されました。
栄誉あるこの方法は、現在も鼻孔縁形成の世界標準の手術法として世界各国で行われています。
鼻孔縁の引きあがりに関して、形状は大きく2つに分類することができます。
正面から鼻の穴が目立つのを改善したい、と希望されることが多い。通常は鼻尖、鼻柱もretractされていることも多いため鼻中隔延長術を適応することが多い。但し鼻中隔延長だけでは、鼻柱、鼻尖さらに鼻孔縁内側は下降するが、鼻孔の中央から外側は変化しないため、かえって外上がりの不自然な鼻孔形態となることもあります。同時に鼻孔縁外側に鼻翼軟骨移植を行うことに良好な結果が得られます。
このような患者では鼻尖、鼻柱は通常の形態であることも多い。鼻孔が大きく目立つため鼻孔を小さくする目的で、またいわゆる”あぐら鼻”の改善を目的に鼻翼縮小術が適応されます。但し鼻孔の外側が引きあがっている形態は大きく変化せず、その部位に軟骨移植を同時に行うことにより鼻孔縁の形態はさらに改善されます。
鼻孔縁に軟骨移植または皮膚―軟骨複合移植を行います。
ドナーとしては、
1)軽症例では鼻翼軟骨
2)中等症例には耳介軟骨
3)重症例では耳介皮膚―軟骨複合組織を選択します。
わずかの変化でよいわけで、頭側切除した鼻翼軟骨を移植片とする。採取できる大きさは10×3mm程度であり、大きな改善は望めないが、軟骨自体薄く、移植後に鼻孔縁でその存在が目立つことがないため安心して使用できる。鼻翼軟骨の頭側切除により上外側鼻軟骨との結合組織による連結が断たれるため、鼻孔縁の尾側方向への可動性が良くなり、それなりに下降効果が得られます。
耳介軟骨を選択するが、軟骨はやや硬く、薄く細工することはできるがそれでも鼻翼軟骨ほどには細工が難しく、薄くしすぎるとちぎれやすく強度が不足する。結局鼻孔縁に移植するにはやや厚く、術後に鼻孔縁の厚みが増し、鼻孔を下から覗いた際には鼻腔内に突出した変形として目立つこともあります。
耳介より皮膚―軟骨複合組織移植を行います。上記の耳介軟骨移植と同様術後に鼻孔を下から覗いた際には、移植片の厚み、移植皮膚の色調の違いなどが目立つ可能性もあるが、鼻孔縁の下降度合いは最も大きく、適応を選べば優れた術式です。重症例では本術式以外改善方法はないと考える。
手術前に患者様を坐位の状態で、鼻孔のどの範囲を下降させるかをマーキングします。その際に左右差も頭に入れておきます。
局所麻酔を注入後、鼻孔縁切開(rim incision)を行います。剥離は鼻翼軟骨直上で行い、頭側に向かって外側鼻軟骨中央あたりまで行います。
両側の鼻翼軟骨を丁寧に露出し、頭側の軟骨をを約3~4mm幅で切除(cephalic trim)し、これを移植片とします。
次に鼻孔縁切開部より辺縁に向かって剥離を行いポケットを作成するが、微細剪刃を用いて慎重に剥離腔をつくります
ポケットを作成した後、先に採取した軟骨に3本の7-0黒ナイロンを通しておき、軟骨片を剥離腔に差し込み、3本の糸に針をつけて、皮膚側に引き出し、最終的にこの糸は尾側に牽引しながらスプリントに固定します。この際糸はある程度の張力で鼻孔縁皮膚を尾側に引っ張るようにするのがコツです。最後の閉創は軽く合わせる程度に6-0青ナイロンで行います。適正サイズのレティナを鼻腔に挿入し、縫合固定して手術を終了します。
重症のretracted nostril rimに対しては、耳介前面のchonchaより皮膚―軟骨複合組織片を20×5mm程度で採取しておく。
鼻孔のカーブに沿うようにドナーを選択する。鼻腔縁切開は鼻毛境界よりやや奥側を切開したほうが、術後に複合組織片の皮膚が鼻腔内を覗いた際に目立ちません。
その後は先の軟骨移植と同様、剥離腔作成します。
軟骨に3本pull-out用の糸を通しておく。複合組織移植片を適正な位置において、3本の糸をpull-outします。
最後の閉層の際に複合組織片の皮膚をパッチのように縫い合わせます。
その際に断面で見ると複合移植片の皮膚と軟骨はずれた状態で移植されている。
最後にレティナを両鼻孔に装着して、鼻腔内に数針縫合しておき、移植片がずれないように固定します。レティナは術後7日目にスプリントともども抜去します。